アルテックとフィンランドの森
アルテック創業時より、アルテックとフィンランドの森は深く繋がりあっています。その絆を、未来へと受け継くための取り組みが始まりました。
フィンランドの国民的アイデンティティの中心には常に森があります。森は生命が息づく場所であり、人々にとっては憩いの場でもあります。そして適切に管理されていれば、世界的な気候変動の影響を相殺する炭素吸収源としても機能します。
かけがえのないフィンランドの森
アアルト夫妻がデザインしたすべての家具は、現在もなお、樹齢50から80年のフィンランド産バーチ材を用い、フィンランドの工場で生産されています。今日、伐採された白樺の木は、もしかするとアイノとアルヴァ・アアルトが共に活動していた時代に、まだ苗木だったかもしれません。一方、今日新たに植えられた種が育ち、伐採され、アルテックの製品として形になるのは、今世紀の終わり頃といえます。
長い年月を経て育った自然素材を伐採し、利用するということは、大きな責任を伴います。だからこそ、今までもアルテックは、その木が育ってきた時間と同様の長い年月を通して使われ続ける製品づくりを目指してきました。
しかし、これからも長く愛されるデザインを作り続けるためには、永続的な森の存在が欠かせません。そして、今、フィンランドの森は変わりつつあります。アルテックが必要とする高品質のバーチ材は、豊かな混交林でしか育ちませんが、フィンランドで一般的な伐採方法である「皆伐」などの、古くから変わらない森林管理によって、豊かな混合林は徐々に姿を消しつつあるのです。
2020年、アルテックは、リサーチを根幹に置くデザインスタジオ、フォルマファンタズマと長期的な協業を開始し、森林との関わり方や木材の調達方法を改めて見直す取り組みに着手しました。
フォルマファンタズマを協働パートナーとして迎え、両者は、フィンランドの森林管理の実態やサプライチェーンの構造、木材の伐採と調達が環境・文化・経済にもたらす影響について、社内外で幅広い調査を進めました。
フォルマファンタズマとの継続的な取り組みによって、現在の森林管理方法が未来に与える良くない影響が明確になり、森林における生物多様性や素材の質、そして世代を超えてデザイン企業として負うべき責任が密接に繋がっていることが見えてきました。それが、森林を購入するという決断にいたった最大の理由です。
アルテックは、自社管理の森林を持つことを目指し、白樺が多く含まれる混交林の取得に踏み切りました。2025年末、最初の森林を購入し、環境への負荷を抑えた「継続的森林管理(CCF)」という手法で運営を始めました。「継続的森林管理」とは、木を一度に大量に伐採するのではなく、必要な木を選び間引いていく伐採方です。また、自然に倒木した木や残すべき生きた木をできるだけ森林内に保つことで、生物多様性を効果的に維持できます。
こうした選択的な伐採によって生まれる森林内の空間は、白樺が自然に種を落とし、日光を浴びて育つのに適した環境をつくり、同時に日陰に強い樹種も育つ、多様性豊かな森に繋がります。植林を行わなくても、自然の力で生物の多様性が広がっていくのです。
フィンランド全土の森林において、「シルバーバーチ」と称される高品質な白樺が占める割合は、わずか 4% に過ぎません。アルテック製品に適した、耐久性と美しさを兼ね備えた特有の品質を持つ木材は混交林でしか育ちません。フィンランドでは、森林を皆伐しその後に植林を行う、「皆伐・再植林方式」が主流ですが、この方法は自然の循環ではなく人工的な再植林を前提としているため、高品質な白樺の木の育成には向いていません。この森林管理方法が広がり続いていくと、アルテック製品に必要な高品質の白樺の供給量は徐々に減少していくと考えられます。
アルテックが所有する森林は、高品質の白樺が育つよう管理されます。現時点での目標は、アルテックが年間に使用するバーチ材のうちの 10% を自社の森から調達できるようにすることです。最初の白樺が成熟するのは 2055 年頃と見込まれていますが、このプロジェクトの目標は、数値的な目標だけにとどまりません。
現在、フィンランドで「継続的森林管理」によって伐採されている木材は 2% 未満にとどまっています。アルテックは、「継続的森林管理」が、技術的にも経済的にも成り立つことを示すことで、フィンランドの他の森林所有者が参考にできるモデル形成を目指しています。