プリント作りのアートと木工技術の遭遇
マリメッコの創業者でるアルミ・ラティアからアルヴァ・アアルトに宛てた一通の手紙があります。この手紙は、異なるデザイン哲学を持ちながらも、共通の価値観を分かち合っていた2つのフィンランドブランドの関係性を物語っています。

「いつでも、どこにいても、それがたとえフィンランドでも、世界の別の場所であっても、私は、あなたを誇りに思っています。」
心もこもったこの言葉は、1975年9月、アルミ・ラティアがアルヴァ・アアルトに宛てて送った手紙の中に綴られたものです。プライベートで交わされたこの短い言葉は、フィンランドのファッションとデザインを世界に発信し、広めたマリメッコとアルテック両社の功績を象徴しています。
この想いは、アルテック創立90周年を記念して発表された「アルテック + マリメッコ」シリーズへと継承されています。マリメッコのプリントづくりのアートと、アルテックの木工技術が融合したこの製品シリーズには、アルヴァ・アアルトを代表するタイムレスな名作「スツール 60」、「ベンチ 153B」、「テーブル 90D」がラインナップされ、マリメッコの「アルキテフティ(建築的な)」プリントコレクションから選ばれた3つのパターンが、印象的に再解釈されています。


異なるデザイン哲学に宿る、共通の価値観
「アルテック + マリメッコ」シリーズに選ばれた3つのパターン ― 「ロッキ(かもめ)」、「キヴェット(石)、セイレーニ(セイレーン) ― は、マリメッコ創業者アルミ・ラティアの依頼により、同ブランドのプリントハウスとしての基盤を築いたデザイナーのひとり、マイヤ・イソラによって生み出されました。
マイヤ・イソラの、ありふれた日常の中に美を見出す感性は、「機能性に美しさが宿る」というアイノ・アアルトのデザイン哲学とも共鳴しています。「アルテック + マリメッコ」シリーズのために選ばれた3つのパターンもまた、自然が生み出す形状や自然素材が着想源です。
マリメッコやマイヤ・イソラのプリントパターンといえば、鮮やかな色彩を思い浮かべますが、「アルテック + マリメッコ」シリーズでは、その印象が一新されています。特徴的な大胆な模様はすべて、フィンランド産バーチ材のナチュラルなトーンで表現され、象嵌(ぞうがん)の技法を活かして異なる木を組み合わせた木目のコントラストによって、パターンはさらに活き活きと浮かび上がります。光と動きにより、想像もしないさまざまな表情を見せる本シリーズの製品は、住空間に自然に馴染みながらも印象的なアクセントになります。
すべての人のためのデザイン
アルテックの明快なシンプルさと、マリメッコの自由で喜びに満ちた表現 ― 異なる2つのアイデンティティ を再解釈したこのシリーズは、フィンランドのファッションとデザインに宿る普遍性と遊び心を、現代において、改めて世界へと広く紹介します。
1950年代、マリメッコは、身体を締め付けない自由なドレスのシルエットと、大胆なプリントの組み合わせを発表し、ファッション業界に革命をもたらしました。マリメッコの服は、世代を問わず自由な精神を持つ女性たちの間で瞬く間に人気を博しました。一方アルテックは、家具を通じて、優れたデザインを日常生活の中に広めることを提案しました。アルテックの家具は、現代においてもなお、世界中の住まい、保育園や図書館などの公共空間に至るまで、さまざまな場所で親しまれています。

Armi Ratia's letter to Alvar Aalto, 24 September 1975
My revered Alvar Aalto,
On Alvar’s name day, I feel like sending you our sponsored Klami album.
Once upon a time I was too shy to ask you to draw me a house. Now it is financially difficult again.
I will always be proud of you here in Finland and also in the rest of the world.
Sincerely yours,
Armi Ratia