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チェア 66

椅子が私にささやく物語

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アルテック製品は、修理や張替えを重ねることでいつまでも使うことができ、時代や文化を越えて愛され続けています。今や世界中に広がっているアルテックの友人やパートナーたちは、アルテックのデザインをこよなく愛し、人生をともに過ごしています。親愛なる友人たちに、アルテック製品への想いを聞きました。

ペッター・エクルンドは、新たな世代に受け継ぐアルテックのチェアについてこう語ります。

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アンティークフェアをぶらぶらしていた時のことでした。私は偶然アルヴァ・アアルトがデザインした「チェア 66」に出会いました。それは、通常仕様の丸い座面ではなく、やや大きめで角の柔らかな長方形の座面で、経年変化によりところどころ擦り切れているものの、精巧に作られていることが分かりました。座面裏を見てみたところ、Artekではなく、Hästbergs skolaの印が刻まれていました。

「へストベリの学校」という意味の刻印です。私の心を掴んだのはその刻印でした。きっとこの椅子は、スウェーデンの鉱山の森の奥にあるヘストベリ村の学校教室で使われていた椅子なのであろうと、私の想像は広がりました。その椅子は私にささやくのです。食後の気だるい地理の授業、試験中の緊迫した空気、机にこびりついた絵の具を爪で引っ掻く音や机の蓋をバタンと閉める音、夏休みが始まる終業日、勢いよく外へ駆け出す足音。すっかり静まり返った教室にその椅子がぽつんと取り残され、また子供達が教室に戻る8月の終わりまで、夏の日差しを浴びながら佇む姿が浮かんできます。

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アルヴァ・アアルトがデザインした椅子がいかに機能的であるかをその椅子と刻印は物語っています。それは、スウェーデン中央部の小さな鉱山地帯に住む子供たちでさえも使える、国や文化や環境を問わず、どこの誰でも等しく使うことができる機能的で普遍的な椅子であるということ。1968年に鉱山は閉鎖され、ヘストベリの学校の生徒数も徐々に減少し、2003年に廃校になったそうです。このボロボロになった椅子は、その後どこを彷徨っていたのでしょう。

私はその中から2脚を自宅へと持ち帰り、子供用の椅子として新しい世代に受け継ぐことにしました。スパゲッティソースとサンドイッチのついた、べたべたの小さな指が、新たな思い出と味わいを重ねてくれます。これから先も、椅子に腰掛け宿題をしたり、遊んだり、この椅子はこれからの私たち家族の営みに寄り添ってくれるでしょう。アルヴァ・アアルトの椅子の素晴らしいところは、どのような部屋にも自然と馴染み、成長に合わせて適応してくれるところです。いつか私の子供たちも自分の子供たちへとこの椅子を受け継ぎ、さらなる新たな使い方や楽しみ方を見つけてくれるでしょう。

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この椅子のもうひとつの素敵なところは、構造がシンプルなことです。多少脚がぐらついても、自分でネジを締めるだけ、面倒なことが一切ありません。脚を座面に直接ネジで止めるだけというシンプルさが私は好きです。装飾的な部分がなく、すべてのデザインが一目でわかるシンプルさ。椅子デザインの歴史の中で、脚を座面に取り付ける方法はたくさん存在していますが、アルヴァ・アアルトはきっとこう言ったでしょう。「一体何なんだ?脚を座面にネジで直接止めたらいい。それがもっともシンプルだ」。自宅で使っている椅子は、スウェーデンのヘストベリ村で何十年も雨の多い夏を過ごしたため、ネジが多少錆びてはいるものの変わらず頑丈で、今でも使い続けています。

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