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より人間らしく生きるための照明

より人間らしく生きるための照明

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モダニズム建築における照明の考え方は、いかに自然光と新鮮な空気を取り入れ、住み手の健やかな暮らしを育むか、そのバランスが大切とされていました。1930年代、アルヴァ・アアルトとアイノ・アアルトは、当時のモダニズムの考え方をさらに進化させ、建築と照明に対する新たな方法論を展開しました。戦前のモダニズム建築を象徴する傑作と名高い、西フィンランドのノールマルックに建てられたマイレア邸に、その挑戦を見ることができます。

マイレア邸は、アルテックの創業者の一人であるマイレ・グリクセンと家族のための住宅として設計されました。爽やかで整然としたモダニズム住宅を基調としながらも、アルヴァ・アアルトは、祖国フィンランドや書籍より影響を受けた日本の伝統的なデザインから、自然素材の魅力と有機的なフォルムを取り入れました。

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マイレア邸一階のリビングは、それぞれの空間から自由に行き来ができるオープンプランの設計として知られています。「森」のように立ち並ぶ籐(とう)で巻かれた柱と、竹林を思わせる階段脇の柱は、木漏れ日のような光を生み出します。マイレア邸を取り囲む松の森がそのまま家の中にまで続いているかのようです。

1920年代、モダニズムの建築家は、小さなオープンプランの居住空間をダイニング、リビング、仕事用スペースに区切るための実用的な方法として照明器具を利用していました。しかし、マイレア邸においては、空間を包む雰囲気が実用性と同等に大切に考えられ、それゆえ、影もまた光と並んで重要な存在と捉えられていました。アアルト夫妻がデザインした彫刻のように美しくも、多彩で独創的なフォルムの照明器具は、バウハウスに代表される幾何学的で無機質な照明器具とは一線を画すものでした。

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マイレア邸に満ちる豊かな光は、当時のモダニズムの常識を超える斬新かつ新鮮なものでした。日中はカーテンやブラインド、植物の隙間から自然光が差し込みます。長い冬の夜には、さまざまな場所に配置された照明が、読書や団らん、くつろぎの時間を温かく包み込みます。

マイレア邸のインテリアと照明の使い方は、1950年から60年代を先取りした、住まいの雰囲気を柔らかく彩る心地良さに溢れています。機能性と実用性を重視した当時のモダニズム住宅の考え方に対し、アアルト夫妻が目指したのは、「より人間味を感じる環境」であり、同様の哲学がすでに家具デザインにおいても体現されつつありました。

一貫した哲学を照明器具のデザインにも応用し、まるで絵画のように自由にコラージュすることで、居住空間はさらに豊かで心地良いものになる、ということをアアルト夫妻は示しました。自然界には多種多彩な光が存在します。その光を取り入れ、利用し、応用することで、「まるで自然のなかで暮らすかのような」建築が実現できる、つまり、それはより人間らしく生きるための建築と照明を形にすることができると考えたのです。

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