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Armchair 41 “Paimio“

モダニズム、その先へ

Paimio Sanatorium exterior

ヒューマンモダニズムの誕生 - パイミオ サナトリウムにおける家具デザインへの考察

フィンランド南西部、パイミオ市の森の中にパイミオサナトリウムは佇んでいます。パイミオサナトリウムは、1933年に竣工された後、現代においてもアルヴァ・アアルト建築の代表として高く評価されています。アルヴァ・アアルトはアイノ・アアルトとともに、結核患者の療養に必要な要素を慎重に検討し、細部に至るまで細やかな配慮を重ねました。余計な音がたたないよう考慮されたシンク、柔らかなカバーを被せたドアノブ、まぶしさを軽減した優しく穏やかな照明、風を用いない暖房機能、心を明るくするカラフルな床、患者の体を少しでも安らかにするために開発された特別な家具。パイミオのサナトリウムは、最も純粋な機能主義の結晶といえます。

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患者の心を癒し、明るくする内装のカラー

アアルト夫妻は従来の機能主義的なモダニズムを継承しつつも、独自の考えを発展させ、自然素材による柔らかく有機的なフォルムを考案しました。結核に侵された患者の体と心を考慮した結果、当時のモダニズムデザインの素材として一般的であったスチールではなく、フィンランドに豊富に存在し、地元で調達可能な木材を用いることにしました。軽量で、掃除や手入れが簡単、さらに病に侵された人の体にも優しい温かみがあり、動かす際に嫌な音をたてることがありません。

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有機的な曲線は柔らかで温かい印象とともに、清掃がしやすいという側面も

アルヴァ・アアルトは、家具デザインは建築の一部であり互いに補完し合うものと考えていました。パイミオサナトリウムは、アルヴァ・アアルトの名前を建築家としてだけでなく家具デザイナーとして世界に広める契機となりました。「パイミオ チェア」として名声を博した一連の家具の中でも、1938年ニューヨークのMOMAの展覧会に展示された「アームチェア 41 パイミオ」は、アアルトを象徴する家具として、世界中の主要なデザインミュージアムに所蔵されています。

Paimio Sanatorium historical photo
パイミオのサナトリウムに並ぶ「アームチェア 41 パイミオ」

アームチェア41パイミオは、家具の素材として木材の有効性を証明し、近代家具デザインの新たなスタンダードを打ち立てました。広く湾曲した合板の背もたれは、結核患者の肺を広き症状を緩和するよう計算されています。パイミオチェアは、1933年、ロンドンの百貨店フォートナム& メイソンで商業的に成功を収め、それはアルテック設立の追い風にもなりました。アームチェア41パイミオは現在でも尚、ほぼデザインを変えることなく生産され続けています。

病に苦しむ人たちをいかに癒すか、その思いをいかに家具デザインへと落とし込むか。葛藤と試行錯誤を重ねた末、アルヴァ・アアルトは独自のヒューマンモダニズムを生み出すに至り、美しい曲線を描く名作家具として具象化されました。

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パイミオサナトリウムの屋上に佇むアルヴァ・アアルト、1932年

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